WSDレポート5:ワークショップと学び
この記事は、青山学院大学大学院主催のワークショップデザイナー育成プログラムの課題として、動画形式の講座を受講して筆者個人の考えをまとめたレポートです。今回は「ワークショップと学び」について書いています。
根源的能動性とは、自身の内面から発現する欲求(内発的動機)を説明する概念であり、対になる概念として他者や自 分の周りの環境から与えられる欲求(外発的動機)があると考えています。
講義の中の学校教育の例えでは、幼稚園から上がったばかりの4〜6月ごろの1年生は内発的な欲求(遊びたい、話したいなど)によって、先生の指示に構わず話し出したり動き回ったりする状態にあり、それを矯正するために先生が一斉に行動を示し、適用できた場合に褒める(報酬)またはできていない場合は叱る(懲罰)などの外的な働きかけによって行動が動機づけられるようになることで、7月ごろには学校教育に適用した姿勢を身につけるとされています。
これを「他者の意図を理解できるようになる」観点で見れば、人間の知能の発達を示す重要な理論として通説とされているものの、「内発的な動機を抑制されて外発的な動機づけによって適用を矯正されている」という観点で見れば、行動の原因を他者に求める(依存する)関係性が助長され、自身の内発的な欲求に気づきにくくなる点で発達に影響を与えることがある、と理解しました。
これに対して、私がイメージしていたワークショップデザイナーの役割とは、自らの考えを発露し、対立構造にならないようにお互いに認め合うことを促し、共通認識や合意形成へファシリテートする役割だと考えていました。
共通点としては、ワークショップデザイナーとして「恣意的にある結論へ誘導しない」ことが重要だと考えています。恣意的な結論へ方向づけることは。前述の通り「外発的動機づけ」を暗黙的に助長する結果になってしまうため、ある意味ワークショップデザイナーが求める正解へ参加者が近づけるような構図になってしまうため、学校教育と同じ構造になる懸念があると考えます。
したがって、ワークショップデザイナーは、テーマについて自身の意思や意見へ誘導するようなことは推奨されず、参加者に内発的な欲求からくるアイデアを発散させ、そこからインタラクションを生み出し方向づけが内発的同期によって推進されるよう支援することが推奨されると思いました。
相違点は特別思いつきませんが、感じたこととして、「内発的な動機をワークショップデザイナーが気づかせる、あるいは引き出す」ために外発的な動機づけが使われることがあり、例えば参加者の内から出たアイデアを「褒める」行為がそうだと思いました。つまり、ワークショップデザイナーは参加者が今どういうスタンスなのか、どのような動機で、どういう意図で参加しているかを把握あるいは察知できている前提がなければ成立が難しいのではないでしょうか。そういう観点で、ワークショップデザイナーには参加者の内発的動機を引き出すために、外発的動機をうまく活用できるような練度と動機を区別できる高度な認識能力が求められると思いました。
余談ですが、私がかつて大学院生だったころ、学校教育のこの思想・構造を「ロボット製造工場」と考えていた時期があり、自身で考えて自ら答えを作るための能力を発達させることを目的とした小学生でもレゴブロックのように、センサーやモーターを組み合わせて無線ラジコンを自作できる学習キットを設計しワークショップ形式で実証していたことがあったので、非常に関心の高いテーマでした。