東京工科大学の2025年後期の担当授業でベストティーチャー賞をいただきました
2025年度後期より東京工科大学デザイン学部で非常勤講師として担当した「専門スキル演習:ユーザインタフェース」の授業で、学生による授業アンケートをもとに、教育的に質の高い授業を実施している教員ということで表彰いただきました。
2025年度 東京工科大学ベストティーチャー賞の表彰式を開催しました | 東京工科大学

これまで社内研修や勉強会などの小さなコミュニティ内での講師はしていましたが、今回初めて教育機関での講師ということでちゃんと有意義な授業にできるか不安を抱える中での開講だったこともあり、受賞のご連絡をいただいた時は嬉しさというよりも驚いたというのが正直な感想でした。
授業は、講師だけでなく学生の皆さんとの共同活動でありコラボレーションです。この活動によって少してもデザインの面白さや学びが学生の皆さんに伝わることで、少しはデザイン業界に貢献できたのではないかと思います。
正直に白状すると、授業自体は反省点がとても多く伸び代しかないと思っていますが、受賞にあたって講話の機会をいただいたので、そこで話した内容をもとに授業での取り組みを振り返ります。
授業の概要
東京工科大学メディア学部の「専門スキル演習:ユーザインタフェース」は、Figmaを使いながらUIデザインの基本原則からUXデザイン、プロトタイピングまでを実践的に学ぶ授業です。

扱うトピックは、アフォーダン スとシグニファイア、ゲシュタルト原則、視覚設計、レイアウト設計、情報設計、ユーザビリティなど多岐にわたります。これを限られた授業時間の中で全て取り扱うには工夫が必要でした。

授業目標としては、これらのスキルをすべて理解・習得してもらうというよりは、「UIデザインおもしれー」と思ってもらい、だんだん没頭していけるような足掛けを目指すことにしました。
授業で工夫したこと
経験学習を通して体験から学ぶ
上述の通り、UIデザインは単体で専門性が成立する分野ではなく、複数の近傍領域が重なり合う学際領域です。知識として理解するだけでは足りず、それぞれの領域がどう作用し合うかを体験しないとスキルとして定着しません。
そこで、コルブの経験学習モデルに沿って授業をワークショップ中心の構成に転換しました。手を動かす → 成果物を共有して言語化する → 原則やパターンとしてつかむ → 次の課題で試す、というサイクルを毎回回しています。

経験学習モデルについては、以下の記事でまとめている通り古典的なフレームワークです。若干の注意点もまとめているので、よければ参考にしてください。
身体性のある参加の仕掛け
毎回席をシャッフルし、なるべく話したことのない人と同じテーブルに座ってもらうようにしています。現場では初対面のエンジニアやステークホルダーといきなりチームを組むことがあるので、その感覚を授業の中で体験してほしいという意図です。
ワークではランダムな2人以上で対話する時間を必ず設け、テーマ・時間・ルールに制約を作ることで協調性の獲得を狙っています。授業の終わりには必ずリフレクション(内省)を実施し、次回のアクションをお互いに共有して「共犯関係」を築く。この仕掛けは、2024 年に参加した青山学院大学のワークショップデザイナー育成プログラムで学んだことが土台になっています。

段階的な課題設計
課題は段階を踏んで設計しています。まず課題1「アイコンのデザイン」でFigmaの基本操作を身につけ、課題2「スマホアプリのUIデザイン」でモックアップとプロトタイプの制作に進みます。
最後の課題3「UXを意識したアプリデザイン」では、ユーザーリサーチから要件定義、情報設計、UIデザイン、ユーザーテストまでを一気通貫で体験してもらいます。

数か月前まで初学者だった学生が、課題を通して「意図して」デザインできるようになった姿を見るのは、やはり嬉しいものです。

生成AIとの向き合い方を楽しく試す
生成AIが何かと話題で、Design is Deadなどと言われる昨今ですが、生成AIは敵ではなくむしろ良きツールとして、自分の手足を拡張するような存在として受け入れてもらいたい気持ちがありました。
そこで、Figma Makeという生成AI機能を使ったワークショップも取り入れました。題して、「絶対にいらないけど、あったら面白いアプリ選手権」というテーマで、プロンプトからプロトタイプを作る体験ワークショップです。
出てきたアイデアの例として、「座れそうなスポットを共有するSNS」「やらかした時のための謝罪練習アプリ」など、学生たちのアイデアは毎回予想の斜め上を行き、盛り上がりました。

一方で、生成AIに甘んじてはならないという一種のお説教もしました。ただ耳の痛いことを伝えるのではなく、現場のデザイナーの視点から生成AIがどのように受け入れられているか、どのように向き合っているかを率直に伝えるようにしていました。

大体の内容は以下の記事でまとめているので、これももし興味があればお読みください。
おわりに
一部の界隈でデザイナーの需要がなくなるだとかAIでSaaSが死ぬとか世の中では好き勝手言われていますが、社会はそんなにシンプルではありません。ゆえに、社会におけるさまざまな困難や課題を解決するために、引き続きデジタルでもハードでもソリューションや仕組みが求められるでしょう。
そこで、私は携わる教育的活動において以下の指針を掲げています。
変わる時代に、変わらない本質を伝え、自らの行動変容を促す学びを。

AIの台頭により顕著になりましたが、デザイナーに求められるスキルは変わり続けています。だからこそ、本質的なデザインの考え方を伝え、学生自身が主体的に学び続けられる土台を作りたいですし、今後も授業をアップデートしながら、UIを通したプロダクトづくりの面白さを伝えていきたいと思うのであります。
変わる時代を楽しみましょう。





