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公開日: 2025.12.09  | 更新日: 2025.12.09

このAI時代にデザイナーがこの先生きのこるには

2025年も暮れようとしていますが、デザイナーのみなさまはいかがお過ごしでしょうか。

ChatGPTが火付け役となった生成AIの躍進はめざましく、ここ数年で画像生成・レイアウト作成・コピーライティングに至るまで、これまで人間が手作業で行っていた領域を完全に代替し始めました。

この不可逆的な流れの中で、私たちデザイナーは生成AIという存在とどう対峙し、この先生きのこるには自身の職能をどう位置付けるべきなのか、少し考えてみたいと思います。


「作る」価値の暴落とプロセスの自動化

まず直視すべき事実は、制作プロセスにおいて人間はもはやAIのスピードと効率に太刀打ちできないという点です。

ラフの作成、バリエーション展開、最終的なアウトプット生成までが自動化された今、「きれいな絵が描ける」「整ったレイアウトが組める」という従来の手作業のスキルセットは、その価値を相対的に暴落させています。

AIは疲れを知らず、指示とクレジットさえあれば無限に、一定以上のクオリティのアウトプットを生成し続けます。この状況下で、単なる作業として「手で作ること」に固執するのは、もはや職人気質ではなく、生産効率性の否定になりかねません。

AIへの指示は「マイクロマネジメント」になっていないか

AIを導入する際、多くのデザイナーが陥る罠があります。それは、詳細なプロンプトでAIを厳密にコントロールしようとすることです。

以下はこの記事のサムネイル画像を生成AIによって出力する過程のキャプチャです。

サムネイルの生成AIによる作成過程の画像

自身の意図通りにAIを制御し、想定内のアウトプットを出させることは、一見すると使いこなしているように見えます。

しかし、実際は「自身の要求やバイアスをAIに投影している」に過ぎません。特に、創造的なアウトプットを要求しようとしている場合、これでは自分の想像の範囲内でしか成果物が生まれず、AIを使う価値が「作業の代替」以上に上振れることは少ないと思います。熟練者の場合は「自分で作った方が早い」となる場合も多いのではないでしょうか。

ピープルマネジメントに置き換えるとわかりやすいかもしれません。

部下に対して厳密にコントロールするマイクロマネジメントは、正解が定義されておりその再現性が求められる反復的な業務においては一定効果がありますが、正解が定義されていない再現性のない創造的な業務においては、ただただストレスを与えるばかりで、上司に対して部下が答え合わせをしようとする(期待を越えられない)構造に陥る、というのはよくある話ではないでしょうか。

このことから個人的には、AIの真価は人間のコンテキストに縛られない無数の選択肢を提示させる「発散」にあるように思います。

人間同士のチームビルディングでもそうですが、個々にタスクをこなすよりも、グループワークで自由に発散させた方が、思いがけない化学反応(創発)が起き、ユニークな解に辿り着くことがよくあります。AIに対しても、あらかじめ正解を定めるのではなく、この予測不能な「ゆらぎ」や「ノイズ」をあえて許容するのです。

あえて制約を緩め、偶発的なアイデアを含めて大量にアウトプットさせる。この「量と多様性」こそが、少子高齢化によって労働人口が先細っていくことが火を見るよりも明らかな日本のデザイナーにとって、AIをパートナーにする最大のメリットではないでしょうか。

職能の本質は「選ぶ力」へ

AIに膨大な玉石混交の選択肢(アウトプット)を提示させる方向性に活路を見出す場合、人としてのデザイナーに残された、そして最も重要な役割は「選ぶ力」ではないかと考えています。

私たちが普段、デザインシステムやUIコンポーネントライブラリなどを使ってボタンやフォームをゼロから描く時間を省略し、画面構成に集中しているのと同じことが、より高度な次元で起こります。

AIは究極のUIライブラリとして、完成された画面そのものを提示してきます。そこでデザイナーに求められるのは、パーツを作る職人芸ではなく、提示された無数の画面をプロトタイプとして繋ぎ合わせ、実際のユースケースに耐えうる「生きたプロダクト」へと昇華させるためのユーザー理解と専門知識に裏付けされた構成力といえるでしょう。

すなわち、デザイナーの職能は、ゼロから生み出す「クリエイション」から、膨大な選択肢の中から最適解を選び取り、文脈を付与する「キュレーション」へとシフトしていくと予想しています。

AIが生成する無数のデータは、判断する人間がいなければただのノイズです。SNSでバズった投稿に群がるbotからの大量のリプライを見れば明白でしょう。誰でも同じようなアウトプットを出力できるようになったからこそ、「なぜそれを選ぶのか」という意思決定の重みが増しています。

選ぶための「作る力」

しかし、私個人の感覚として、ここには重要な逆説があると考えています。

それは、「選ぶ力」は、AIを使っていれば勝手に身につくものではない、ということです。

これまで、プロダクトデザイナーとしての立場から、エンジニアや新卒デザイナー、大学の学生など様々な人々にデザインの技術を教えてみた感触として、マニュアルを作って渡すだけでは「そのUIであるべき妥当な意思決定」はなかなか再現できず、自分自身の力でゼロから思考し、実践的に手を動かし、デザインしてきた経験の蓄積からしか生まれないという経験則があります。

自力で高品質なアウトプットを生み出せる「基礎スキル」がない人間には、AIが提示したアウトプットの良し悪しを構造的に理解できません。自分で料理を作れない人間に、真に繊細な味の違いや調理工程の妥当性が判断できないのと同じだと思っています。

もし、AIに全面的に依存し、自らの制作能力を放棄してしまえば、やがて選ぶ力としての審美眼も曇り、AIというツールが使えなくなった瞬間に「何も生み出せない無価値な存在」へと転落するリスクがあります。

したがって、これからのデザイナーに求められる生存戦略は極めてシビアです。

実務においてはAIを使い倒して「キュレーター」として振る舞いつつも、個人の能力としては、AIがなくても同等以上のものを作り出せる「クリエイター」としての地力を鍛え続けることが求められるでしょう。

「自分で作れる」という担保があるからこそ、AIの結果をクリティカルに評価し、選ぶことができる。この矛盾した二面性を維持し続けられる者だけが、AI時代においても替えの効かないデザイナーとして生き残ることができるのではないでしょうか。

ブラックフライデーの季節が始まるということで、今回は在宅ワークに関する身の回りアイテムの紹介です。 本記事では、2025年現在、私のデスク環境で実際に活用し、仕事の効率や快適性を上げてくれた「買ってよかったもの」を紹介します。

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この記事を書いた人
うえんつ
B2B領域のSaaS・アプリケーション開発などを組織で取り組むことが得意なプロダクトデザイナーで、このブログのオーナーです。
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Figma・UIデザイン・UXリサーチ・QOL・旅行
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